漢方・薬膳では、体内を巡る「気」「血」「水」の3つで、心と体のバランスを見ます。3つが体内をスムーズに流れていれば健康であると考えられ、どれか1つでも欠けてしまうと、バランスが崩れ不調が表れると考えられています。バランスの乱れ方は人それぞれ体質によって異なるため、自身の体質を知ることで、改善策を講じやすくなります。
ここでは、中医学的な体質のタイプについて解説します。記事の最後には、自身の体質がどのタイプか分かる「体質チェックシート」もご用意しているので、タイプ別の悩みを理解し、自分に合った薬膳・漢方茶を選ぶ際の参考にしてみてください。
「気滞」の人は、体のエネルギーの循環が滞っている体質で、自律神経系のコントロールができず不安定な状態です。起こりやすい症状は、「イライラしやすい」「過食傾向」「情緒不安定」「ガス(ゲップ、おなら)が出やすい」など。
体質改善には、「毎朝の深呼吸で心を落ち着かせる」「アロマテラピーによるリラックス空間を作る」「甘い物をとり過ぎないように注意する」といったことを心がけましょう。
また、「気滞タイプ」は主にストレスにより気の流れが停滞しているため、気の流れを促進し理気作用のある食材、例えば、小松菜、春菊、セロリ、しょうが、ニラ、菊花、紫蘇、みょうが、みかん、柚、胡椒などをとるようにしましょう。
「気虚」の人は、慢性的なエネルギー不足の体質。エネルギー摂取の効率が悪く、消耗が多い状態です。起こりやすい症状は、「疲れやすい」「汗をかきやすい」「食欲不振」「食後に睡魔がくる」「風邪をひきやすい」「消化不良」など。
体質改善には「朝食をしっかりとる」「体の冷えが原因のため、体を温める食材を選ぶ」「過労を避け充分に睡眠をとる」といったことを心がけましょう。
また、「気虚タイプ」は気が不足して、気力や消化力も低下している状態なので、消化の良いもので気を補う効果のある食材、例えば、なつめ、高麗人参、はとむぎ、雑穀類、とうもろこし、かぼちゃ、枝豆、イモ類、しいたけ、リンゴ、うなぎ、鶏肉、牛肉などの食材をとるようにしましょう。
「瘀血」の人は、血の循環が滞っている体質で、血液の質や血管の状態があまり良くなく、血流が悪い状態です。起こりやすい症状は、「頭痛」「肩こり」「月経痛」「肌のくすみ」「シミ、ソバカス」「アザができやすい」「下半身は冷えているのに上半身がのぼせやすい」など。
体質改善には、「適度な運動で基礎代謝を上げる」「冷たいもののとり過ぎに注意する」といったことを心がけましょう。
また、「瘀血タイプ」は何らかの原因で体内の血がスムーズに流れていない状態なので、血の巡りを良くする作用がある食材、例えば、黒きくらげ、唐辛子、山査子、小豆、黒豆、ピーマン、玉ねぎ、ニラ、にんにく、らっきょう、桃、かつお、酢のものなどをとるようにしましょう。
「血虚」の人は、慢性的に血が不足している体質。または、量は充分でも血の質があまりよくない状態です。起こりやすい症状は、「貧血、めまい、ふらつき」「不眠」「手足の冷え、しびれ」「乾燥肌、しわの増加」「視力低下、目の疲れ」「月経量の減少、月経遅れ」など。
体質改善には「夜更かしを避ける」「不眠の場合は、アロマテラピーでリラックスする」といったことを心がけましょう。
また、「血虚タイプ」は血が不足しているため栄養が足りず、貧血や冷え性などを引き起こしやすい状態です。血を補う作用のあるタンパク質やビタミン、カルシウムが豊富な食材、例えば、なつめ、高麗人参、はとむぎ、雑穀類、とうもろこし、かぼちゃ、枝豆、イモ類、しいたけ、リンゴ、うなぎ、鶏肉、牛肉などをとるようにしましょう。
「水滞」の人は、水分の代謝が悪い体質で、水分が体内で停滞している状態です。起こりやすい症状は、「むくみ」「冷え性」「肥満傾向」「下痢気味」「鼻水、鼻づまり」「頭が重い」など。
体質改善には、「冷たい飲み物を控え、温かいものをとる」「体の冷えを避け、体を保温する」「適度な運動で汗を流し、新陳代謝を高める」といったことを心がけましょう。
また、「水滞タイプ」は、水分代謝が悪く、水の排出が体内で停滞している状態です。水分のとりすぎや冷たい飲み物を避けて、カラダを温める食材や水の流れを良くする(水分代謝を良くする)食材、例えば、金針菜、はとむぎ、あずき、黒豆、海藻、とうもろこし、とうもろこしのヒゲ、キュウリ、冬瓜、もやし、スイカなどをとるようにしましょう。
「陰虚」の人は、慢性的に全身の潤いが不足している体質。乾燥感や体が熱っぽく感じる状態です。起こりやすい症状は、「めまい、かすり目」「のぼせ、ほてり」「乾燥肌」「空咳が出る」「便秘」「口が渇く」など。
体質改善には「体を熱くさせる辛味が強いものや熱いものは避ける」「適度な運動後、充分に水分を補給する」といったことを心がけましょう。
また、「陰虚タイプ」は過食などで体に余分な熱がたまりやすいタイプなので、低エネルギーで体を冷やす作用のある食材、例えば、れんこん、白菜、しいたけ、セロリ、梨、ブドウ、バナナ、松の実、くるみ、いか、ごま油などをとるようにしましょう。
「最近、ちょっと調子が悪いかな」と感じるときは「気」「血」「水」のどこかにゆがみがでている可能性があります。自分の体質によって気を付けるべきことが異なりますので、体質チェックシートで自分がどのタイプか確認してみましょう。最もチェックが多い項目があなたの体質タイプです。
自身がどのような体質かを知ることが、心と体を健やかにする第一歩です。漢方や薬膳は難しそうと敬遠されている方は、普段の生活の中で気軽に始められる漢方茶から始めてみてはいかがでしょうか?