四季折々、それぞれの季節ごとに、気分やお肌、体調など心身のバランスは乱れがちになります。「冬」の外因邪気である寒邪は、寒さや冷えで体を縮こまらせ、活動する力を衰えさせます。それにより、血流が悪くなったり、体のあちこちに痛みが出やすくなります。
「スターツ出版」が運営するWEBメディア「OZmall」が実施したアンケートでは、冬の悩みに「冷える、冷え性」を挙げた女性が7割以上もいるという結果があります。
出典: 【温活】7割以上の人が悩んでいる冷え。早めに「温活」でケアしよう - OZmall
これらの症状は、どのような原因で起こるのか。また、どのような対策が効果的なのか。今回は、国際中医師で薬剤師の崎山久美子さんに聞いてみました!
崎山久美子さん / 漢方薬局 株式会社花凛堂代表
1976年、大阪生まれ。薬剤師・国際中医師。近畿大学薬学部卒業後、製薬会社に勤務。体調不良がきっかけで漢方と出会い、上海中医薬大学日本校で中医学を学び、国際中医師資格を取得。中医学と薬草・生薬の知識を合わせ持ち、カウンセリング漢方茶を作れる「漢方茶ブレンダー」を育成する「漢方茶ブレンダー養成通信講座」を開講、生徒の指導にあたっている。(漢方カフェ・漢方薬局花凛堂 https://karin-dou.com)
漢方カフェ・漢方薬局花凛堂
https://karin-dou.com
漢方には「陰陽悦」という考え方があり、基本的に女性は「陰」、男性は「陽」に分類され、男性に比べて女性の方が冷えやすい体質と考えられています。また、漢方の「冷え」は、“内臓の冷え”と“経絡の冷え”に分けられます。
“内臓の冷え”は食習慣が要因とされており、現代では季節を問わず冷たいものを摂取する機会が多いため、年中通して内臓を冷やしてしまい、冬場に冷えが蓄積され、結果的に冷え性になってしまうケースが多く見られます。
また、夏場は冷房もよく効き足元が冷えてしまうため、足先に溜まった冷えた血が循環する過程で腰まわりを冷やしてしまい、内臓が冷えてしまう方も多く見受けられます。
一方、“経絡の冷え”はストレスが原因で気血の巡りが悪くなり、体は熱いけど手足先だけ冷えるという症状が出ます。そのような方は温めることに専念しすぎると、血流が滞っているのに温めるため、知らず知らずのうちに熱がこもってイライラしやすくなってしまいます。“経路の冷え”の場合は、気血を巡らす効果のある薬膳やお茶を取ることを心掛ける必要があります。
漢方には、五行説という考え方があり、あらゆるものを5つの要素に分類しています。この五行を人体に応用したのが「五臓」であり、冬は五臓の中でも「腎」が消耗しやすい季節とされています。
「腎」は生殖機能系と関係している臓器で、「夜中に尿意で目が覚める」といった頻尿や夜間尿などの症状が出やすいと言われています。また、「腎」が消耗し陽気が不足することで、冷え性や腰痛も起こりやすくなる傾向があります。
人は生まれつき決まっている量のエネルギーを少しずつ使って成長し、全てが尽きるときが寿命、と考えられています。普段から自身が持っている以上のエネルギーを使ったり、過労になったりすると「腎」が消耗され、老化が進みます。老化が進むと、エネルギー自体が減っていくため、その分冷えやすくなってしまいます。
仕事をしていても、家事育児は女性がするものという風潮がまだまだ強いため、女性はエネルギーを消耗しやすい傾向にあります。そのため、冷え性だけでなく、生理が遅れてきたり、不妊症に悩んだりなど、「腎」の消耗が原因で起こる症状も多くなってきます。
中医学では、植物が葉っぱを落としたり、動物が冬眠したりするように、冬はエネルギーを溜めておくべき季節と考えます。逆に、春は植物が芽や花を咲かせ、動物だと出産が多い季節。冬の時期に「腎」を温存することはとても重要です。
また、冬の時期に不調で悩む女性は、まずは冷たい飲み物を控えることが基本です。
生理不順や不正出血で悩む女性に話を聞くと、時短や節約のためにお風呂をシャワーで済まし、湯船に浸かっていないという方が多い傾向にあります。冷えを放っておくと、子宮筋腫や子宮内膜症など生殖機能のトラブルなども引き起こしやすくなります。お風呂にゆっくり浸かる、無理し過ぎずゆっくり体を休めることを心掛けてください。
薬膳でいうと、冬の季節はたんぱく質が豊富な肉類、特にラム肉がおすすめです。寒い地域だとジンギスカンを食べますよね。ラム肉は体を温める働きが強いので、薬膳の考えでは理にかなっている食材なのです。薬草では、よもぎ、乾姜(カンキョウ:ショウガを蒸した後に乾燥させたもの)がおすすめです。
「生姜=体」を温める、というイメージがあるかと思いますが、生姜は血流を良くし、末端の熱を発散させる働きがあるため、逆に体を冷やす原因になってしまうことがあります。風邪のひき始めなどに使う分には良いのですが、慢性的な冷え性に対して生姜はあまり良くないので注意が必要です。
また、なつめも滋養強壮に良いと言われています。漢方では五臓の「脾」が体を温める働きがあると考え、臓器でいうと胃や十二指腸のあたりのことを指します。なつめは食欲不振や冷えで弱っている胃の調子を安定させる食材としておすすめです。
「漢方」「薬膳」と聞くと、どうしても敷居が高いイメージがありますが、普段の生活の中で少し意識してお茶を漢方茶に換えてみるなど、まずは無理なく続けられる習慣を作るのがおすすめです。そうすることで、ただの水分補給ではなく、体の内側から温めることにつながっていきます。